バングラデシュ 奇跡の刺繍―SDUWのノクシカタ
ノクシカタ(ノクシ・カンタ)とは?
― バングラデシュ ベンガル地方の伝統的な刺繍 ―
ノクシカタとは、もともと着古されたサリー(女性用の1枚布の民族衣装)やルンギ(男性用の腰巻)などを3〜4層に重ね、刺し子を施して、赤ちゃんのおくるみや冬用の上掛けとして再利用するために生まれた伝統的な技術です。
この伝統は、母から娘へと受け継がれ、上手にノクシカタをつくることのできる嫁は婚家でも大切にされたと言います。
「ノクシ」=デザイン、「カンタ」=布
刺し子の上には、文字にならない彼女たちの想いが様々なモチーフ(魚=多産、鳥=愛情、蓮の花=現世、宇宙)をともなって、一針一針刺繍されていきました。
この伝統はパキスタン時代(1947−1971)に一時衰えますが、バングラデシュ独立後の民族芸術復興運動の中で、恵まれない女性の自立を助ける事業として再生し独自の発展を遂げます。
バングラデシュの代表的なフェアトレード商品
素朴で味わいのある刺繍が施された壁掛け(タペストリー)やクッションカバー、ペンケースやポーチ等の商品が次々と生み出されました。
かつて、家内でのみ作られ使用されていたノクシカタは、今やバングラデシュの代表的なフェアトレード商品として世界各地に輸出され、また国内でも愛用され、農村や都市でその製作に携わる多くの女性の生活を支えています。
このような伝統と歴史を持つノクシカタは今、バングラデシュの民俗芸術を代表するものとして、美術館や博物館の所蔵・展示の対象にもなっています。
2001年には、福岡アジア美術館で展覧会が開かれて注目を集めました。
SDUWのノクシカタ
高い刺繍技術力
バングラデシュで製作される多様なノクシカタのなかでも
SDUW(Skill Development for Underprivileged Women)
の作品は、その斬新なデザインと刺繍技術の高さで他に抜きん出た存在です。
画家 スレイヤ・ラフマン女史
これらの作品は、画家のスレイヤ・ラフマン女史がこのプロジェクトのために描いた約100点の原画を元に製作されています。
そのモチーフは、農村の日常生活、農作業、結婚・祭り等の行事や、植民地時代の風俗、そして民話から採られています。
大胆かつ巧みな構成と効果的な色使いは、他の模倣を許さない独特の臨場感と躍動感を生んでいます。
そして、細部にわたる緻密な仕上げは人物の心の彩をも映し出して、背景にある物語を想像させます。
SDUWの女性たち
SDUW
SDUWは、バングラデシュの首都ダッカに住む恵まれない女性たちの生活向上を目的として1982年に設立されました。
刺繍の技術指導に加えて、識字教室や保険・栄養サービス・家族計画教室・託児所の運営・著知己の奨励等、女性のための社会開発・教育活動を併せて実施し、所得・収入向上だけではなく、働く女性たちとその家族の総合的な生活・権利の向上を目指しています。
技術力の向上
夫を失った寡婦や、一家の働き手を失った母子家庭の母親、そして様々な障害を持つ女性たちが6ヶ月の研修を受けた後に、このノクシカタ製作に取り組みます。
最初は簡単な紋様から始まって,技術が向上するに連れて人物へ,そして顔,最後は目と徐々に複雑で高度な技術が必要とされる部分を担当します。